血球について

◎赤血球
 生物は、酸素を使ってエネルギーを得ているので、生きていくには酸素が必要です。その酸素を運ぶ物質がヘモグロビンであり、ヘモグロビンを詰め込んで体中に酸素を運ぶ役割をしているのが赤血球です。ヘモグロビンは、赤い色をしており、これにより血液全体も赤く見えます。赤血球は、血液中にある最も多い血球成分であり、血液1μlあたり500万個程度存在します。(1μlというのは、1辺1mmの立方体の容積と考えて下さい。)ヘモグロビンは、1dl中に、男性で15g程度、女性では13g程度存在します。このヘモグロビンの値が少ないことを貧血と言います。貧血の中でもっと多いのは、鉄が不足することにより起こる鉄欠乏性貧血です。この鉄欠乏性貧血では、ヘモグロビンの減少に比して、赤血球の減少は強くありませんので、結果として一つ一つの赤血球の容積やヘノグロビン含量が減ることになります。鉄が不足する原因には、偏食等による摂取不足、月経出血による損失、消化管潰瘍からの出血による損失、痔疾出血による損失、スポーツ等による大量発汗による損失等がありますが、なんと言っても重要なのが消化管悪性腫瘍からの出血による損失が重要です。貧血になった時は、どのような種類の貧血か、悪性腫瘍等の重大な原因疾患が潜んでいないかを調べることが必要です。赤血球は骨の中心部にある骨髄と呼ばれるところで造られます。幹細胞と言われる細胞からいくつかの段階を経て成熟し,最後に核が抜けてなくなり赤血球となります。赤血球の寿命は約120日で,古くなると脾臓等で処理され壊されます。そのほぼ同量の、ヘモグロビンと赤血球が作られますので、毎日約1%ほどの赤血球が新しいものに代わっていくことになります。

◎白血球
 白血球は、細菌等の病原体から体を守る働きをしている血球です。血液1μlあたり5000個程度存在し、赤血球の1000分の1程度の個数しかありません。白血球数は個人差が大きく、3000以下の人や9000以上の人があります。また、細菌感染症のような生体防御が必要な時は、血液中の数が増え、数倍にもなることがあります。白血球にはいくつかの種類があり、その中で最も多いものが好中球です。この好中球が細菌に対する感染防御の中核となります。好中球は細菌と出会うと、貪食して細胞の中に取り込み、殺菌します。殺菌するために様々な道具を持っていますが、その中で中心をなすものが活性酸素です。活性酸素は、老化を促進するなど負の部分が強調されますが、殺菌という有用な働きもしてくれます。好中球に次いで多いのが、リンパ球です。リンパ球には、免疫を記憶するもの、抗体を産生するもの、腫瘍細胞やウイルスに感染した細胞を破壊するもの等いくつかの種類があり、作業を分担しています。好酸球という白血球もあり、アレルギー疾患や寄生虫疾患の時に増加します。


◎血小板
血小板は、血管が破れて出血したとき、破れた部分を塞いで、出血を止める働きをします。血小板は骨髄の巨核球という大きな核を持つ細胞の細胞質が数千個に細かくバラバラにちぎれて出来たもので、上記の赤血球や白血球に比し、ずいぶんと小柄です。血液1μlあたり20万程度存在し、赤血球と白血球の間ぐらいの数です。血管壁が破れると、血管壁の構成成分のコラーゲンが露出し、血漿中のフォンヴィレブランド因子(vWF)を介して、血小板が結合します。さらにvWFを介して血小板同士が結合していき、傷口をふさいでいきます。とりあえず、これで止血されるのですが、さらに強固なふたをするために、様々な凝固因子がはたらき、最終的にフィブリンという蛋白をネット状に固めて補強します。
 血小板は毛細血管の補強作用にも働きます。毛細血管の内側は内皮細胞で覆われていますが,細胞と細胞の間には,隙間が存在しその隙間を通して酸素と栄養分が組織に移動し,二酸化炭素や老廃物が血管内に戻ってきます。この毛細血管の内皮細胞の隙間に血小板は付着し血管内皮を補強しています。この補強がないと,隙間から血球が血管外に漏出し点状出血が起こります。



京都市中京区 内科皮膚科 西村医院