肝炎ウイルス
 現在肝炎ウイルスは、5種類確定されており、その中でもB型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスは、最も重要なウイルスです。輸血、血液製剤、出産時の母子感染、注射器の使い回し等が、多くの患者を生んだ原因とされています。幸い現在は対策が充実し、新規感染はほとんどなくなりましたが、以前に感染した人の確認は十分とは言えません。B型とC型の両ウイルスは、共に発癌性があり、定期的な経過観察が必要ですので、一度も肝炎ウイルスの検査をしたことのない中年以上の方は、ウイルス検査を受けることをお勧めします。肝炎の治療は進歩し、ウイルスを完全に排除できる割合も増え、癌化する確率も著明に減らすことができるようになりました。肝臓癌の診療も進歩し、様々な治療法が開発されています。


 A型肝炎
 A型肝炎ウイルスは、旅行者が東南アジアや南アジアに旅行し、感染するウイルスです。昔は、衛生環境が悪かったため、日本国内で大多数の人が自然に感染し、発病せずに抗体を持ちました。しかし、現在は衛生環境が改善し、日本国内での感染は、生の魚介類を食べた一部の人に限定され、大部分の感染者は旅行者です。
 感染すると一ヵ月の潜伏期の後に、感冒様症状、黄疸という症状で発病しますが、通常は慢性化せず自然に治癒します。しかし、ごく一部の症例では劇症化し重篤になりますので、要注意です。


 B型肝炎
 B型肝炎は、昔は輸血による肝炎の原因ウイルスとして問題でした。しかし、ウイルスが発見されてからは、血液の事前のチェックにより輸血による感染を激減させることができるようになりました。また、主に産道感染による、出生児の母子感染も、ワクチンや抗体を用いた予防治療により、やはり激減させることができるようになりました。しかし、昔母子感染により慢性化した人の治療は今も問題となっています。B型肝炎ウイルスに感染している肝臓から、しばしば肝臓癌が発生するためです。また、最近genotype Aと言われる、遺伝子型のB型肝炎ウイルスが、性感染症として増えていることも問題です。これまでのB型肝炎ウイルスは、急性肝炎が後に慢性化するのは乳児を中心とした小児の感染のみでしたが、このgenotype Aのウイルスは、成人になって感染しても、慢性肝炎を起こします。
 B型肝炎に感染すると、約3ヵ月ほどの潜伏期の後に、感冒様症状で発症します。その後、黄疸が生じます。
B型肝炎予防のためのワクチンがあり、日本ではgenotype A HBV由来のヘプタバックスとgenotype C HBV由来のビームゲンの2種類の遺伝子組み換えHBワクチンが使用可能です。成人に対して使用する場合は、0、1、4−5ヶ月の3回接種します。


 C型肝炎
 C型肝炎は、慢性化すると、肝硬変、肝癌に進展し、生命を脅かす病気となります。中年以上の方が大部分であり、多くの方は、感染経路が不明です。慢性C型肝炎の治療は急速に進歩しつつあり、PEGインターフェロンという、長時間作用するサイトカイン製剤に加え、リバビリンという抗ウイルス剤も併用して使えるようになりました。さらにプロテアーゼ阻害剤であるテラプレビルも使用できるようになりました。2型のウイルスやウイルス量の少ない方の大部分は、ウイルスが陰性となる著効を得ることができ、最も治療の反応が悪い1b型の高ウイルス量の人でも、70%ぐらい著効を得ることができるようになりました。また、治療薬に反応しやすい人としにくい人の遺伝子に関する知見も得られてきました。その一つが、IL28B遺伝子で、メジャーホモ(TT)接合体の場合は治療に対する反応がよく、ヘテロ(TG)接合体やマイナーホモ(GG)接合体は治療に対する反応が悪いことがわかってきました。
 C型肝炎の方やその疑いのある方は、一度は肝臓の専門医もしくは内科の専門医に相談して下さい。


 D型肝炎
 D型肝炎ウイルスは、単独では増殖できず、B型肝炎ウイルスが存在しているときのみ増殖できます。よって、同ウイルスが病気を引き起こすのは、B型肝炎ウイルスと同時に感染したとき、もしくはB型肝炎ウイルスのキャリアに感染した時に限られるということになります。一般に前者の同時感染の場合は、慢性化することは低率ですが、後者の重複感染の場合は、高率に感染します。


 E型肝炎
 E型肝炎ウイルスは、A型肝炎ウイルスと同様に、経口感染します。インドやネパールで多く発生することが知られています。日本では、発生数は少ないですが、ブタやイノシシの肝臓を生で食したりすることでの散発的な発生がみられます。妊婦が感染すると重篤になることが多く、注意が必要です。



京都市中京区 内科皮膚科 西村医院   (肝炎ウイルスの検査を行っています。)

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