高血圧症

 血圧は、血管内の圧力です。この圧力は、心臓が収縮して血液を送り出す力により生み出されます。心臓の収縮時が最も高く、最高血圧(収縮期血圧)と言われます。逆に拡張している時が最も低く、最低血圧(拡張期血圧)と呼ばれます。このいずれかの血圧が。基準値より高い時を、高血圧症と言います。
高血圧治療ガイドライン2009では、血圧の基準は、以下のように分類されています。
          収縮期血圧(mmHg)      拡張期血圧(mmHg)
至適血圧       120未満     かつ     80未満
正常血圧       130未満      かつ     85未満 
正常高値血圧    130〜139    または    85〜89
T度高血圧      140〜159    または    90〜99
U度高血圧      160〜179    または    100〜109
V度高血圧      180以上     または    110以上
収縮期高血圧    140以上     かつ      90未満
(これらは,医療機関での血圧測定に基づいた分類です)

 高血圧は、何十年も前から体に良くないことは言われてきました。しかし、その基準値は時代によって変わり、2004年のガイドラインでは、最高血圧(収縮期血圧)140mmHg以上もしくは最低血圧(拡張期血圧)90mmHg以上を高血圧としています。それ以前の基準では、最高血圧160以上、最低血圧95以上でしたので、より厳しくなったことになります。2009年のガイドラインでもこの基準は、引き継がれています。これは、何万人という人を対象とした大規模臨床試験で、従来の基準より低い血圧を維持した方が、合併症を起こす率が少なく、長生きできることがわかったからです。
 高血圧かどうかは、診察室での血圧測定よって決められ、治療の経過も診察室での血圧測定の結果に基づいて行われてきました。血圧は、変動しやすい性質があり、月に2回程度の医療機関での血圧測定では、十分に評価ができないことがしばしばあります。この欠点を補うのが、家庭血圧の測定です。家庭血圧は毎日測ることができ、かつ一日の内で何度でも測ることもでき、リラックスして測れますので、普段の血圧を知る上で、極めて重要な情報を提供してくれます。標準的な測定時間は、朝は起床後の排尿をすませた後の朝食をとるまでの時間、夜は寝る前となります。入浴、喫煙、コーヒー、飲酒は血圧に影響を与えますので、測定直前は避けて下さい。家庭血圧では、135/85mmHg以上を高血圧とし、125/80mmHg未満を正常血圧としています。
 家庭血圧計を購入される場合は、腕にマンシェットを巻いて測定する血圧計が推奨されます。手首や指先で測る血圧計は正確さでやや劣ります。
 家庭血圧は正常なのに,医療機関で測ると高血圧になる人を白衣高血圧と言います。白衣高血圧とは,白衣を着た医師・看護師などに血圧を測定された場合にのみ示す高血圧のことを言います。白衣高血圧は,本来正常血圧の人が,緊張により一時的に高くなっているだけですので,特に治療の必要はないと考えられていますが,長期的な予後に疑問があり,大丈夫とは言い切れません。白衣現象という言葉もあり、白衣を着た職員に血圧を測定されると本来の血圧より高くなる現象ですが、家庭血圧も高い「本当の高血圧」の人に対して使う言葉です。
 仮面高血圧は,家庭血圧は高いのに,医療機関で測ると正常の値を示すことです。仕事でストレスにさらされている人は,かえって病院に来ている時の方がリラックスできることがあります。また、病院内は禁煙のことが多く、血圧を上昇させる喫煙を行えず、測定条件が普段より降圧に有利な状況になっていることがあります。仮面高血圧の方は、診察室の血圧測定では正常とされますが、普段の生活は高い血圧の中で過ごしているため,様々な合併症を引き起こしやすく、治療が必要です。
 白衣高血圧も仮面高血圧も、その発見には家庭血圧の測定が必要です。普段の自然状態の血圧値である家庭血圧値を測定すると、血圧に関する多くのデータを得られ、健康管理に大いに役立てることが出来ます。高血圧の方やその疑いのある方は、測定して記録をつけることをお勧めします。
 高血圧症の大部分は、原因のわからない本態性高血圧ですが、血圧が上がる原因があっておこる高血圧を、二次性高血圧症と呼びます。多くは、ホルモンの異常によりおこる二次性高血圧症です。そのなかで、最も有名なのが腎血管性高血圧症です。腎臓に血液を運ぶ腎動脈が、動脈硬化や炎症で通りが悪くなると、腎臓は血の巡りを良くするために、レニンというホルモン分泌します。このレニンというホルモンはアンジオテンシンというホルモンを分泌させることにより、血圧を上昇させます。最近注目されている二次性高血圧症として原発性アルドステロン症があります。これは、アルドステロンというホルモンを分泌する腫瘍が副腎にできるために血圧が上がる疾患です。以前は、ごく希な病気と思われていましたが、最近は、予想以上にこの疾患が多いことがわかってきました。しかし、頻度の多さでは、甲状腺機能亢進症による二次性高血圧症が一番です。首ののど仏にある甲状腺という内分泌器官から甲状腺ホルモンが出すぎるバセドウ病では、一般に収縮期血圧が上昇します。本疾患では、脈が多くなったり、手の振戦や発汗が起こることが特徴です。高血圧症の患者さんは、一度はレニン、アルドステロン、甲状腺ホルモンを測定してこれらの二次性高血圧症でないかを確認することが大切です。


 高血圧の治療の基本は食事療法です。食事の中で、血圧に最も関係あるのは塩分です。日本人は、欧米人と比べて塩分の摂取量が多いと言われています。高血圧治療ガイドライン2009では1日6g未満の摂取を推奨しています。味噌汁、漬物は塩分が多いため控えましょう。麺類を食べる時は、汁を飲まないように心がけましょう。また、肥満は血圧を上げやすくする要因の一つです。体重の多い方は、減量を心がけましょう。
 食事療法で十分に血圧が下がらない時は、薬剤による治療が必要になります。最近は、優れた薬剤が多数作られており、大部分の人が自分にあった薬剤を服用できるようになりました。しかし、まだ高血圧を完治させる治療薬はなく、薬が効いている間血圧が下がっているだけですので、絶えず飲み続けることが必要です。飲んだり飲まなかったりというのは、血圧が上下してよくありません。かといって、飲まないで高血圧のままで放っておくのは、動脈硬化を進め、脳出血等の二次的病気を起こす可能性があります。きっちりと薬剤を服用して、健康を保つ事が大切です。


京都市中京区 内科皮膚科 西村医院

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