甲状腺機能低下症

 甲状腺は,首ののど仏のあたりにある,ホルモンを出す臓器です。甲状腺ホルモンは,活気を与えるホルモンといってもよく,分泌が減少すると、活動力の低下・脱毛・浮腫がみられ、甲状腺機能低下症という病気となります。甲状腺ホルモンにはT3とT4という2種類のホルモンがあります。主に活性を持つのはT3であり、T4が血液中で徐々にT3に変化することによりホルモン活性を示します。T3もT4も大部分は血液中の蛋白と結合しており、一部のみが単体で存在し、free-T3及びfree-T4と呼ばれます。実際にホルモンの活性を示すのは、単体で存在しているホルモンですので、甲状腺機能を見る場合は、free-T3とfree-T4で判断します。甲状腺ホルモンの分泌量は、下垂体からでるTSHというホルモンが決めています。甲状腺機能低下症では、free-T3とfree-T4が下がり、逆にTSHが増加します。ごく軽度の甲状腺機能低下症では、free-T3とfree-T4は正常域内にとどまりTSHの増加のみが見られます。甲状腺機能低下症と間違いやすい病気に、low T3 syndromeという病気があります。これは、栄養摂取不足の際、体を守るためにネルギーの消費を押さえようとしている病態です。この場合は、free-T3とfree-T4の低下が見られますが、TSHは増加しません。
 甲状腺機能低下症の治療は、甲状腺ホルモン剤を服用する補充療法です。以前は、T3とT4の両者の混ざった甲状腺末を使いましたが、最近はT4の製剤であるチラージンSという薬剤を使用するのが一般的です。甲状腺ホルモンの服用を始める際は、少量から始め、徐々に増やしていくのが原則です。また、副腎機能不全を合併しているときは、先に副腎皮質ホルモンを補充してから、甲状腺ホルモンの補充を始めなければいけません。


京都市中京区 内科皮膚科 西村医院