肝臓癌

 肝臓癌には肝細胞癌、胆管細胞癌があります。その他、消化管等で発生した癌の転移による転移性肝癌があります。

 ここでは、最も重要な肝細胞癌について記します。
肝細胞癌は、健常な肝臓から発生することはきわめて希であり、通常は基礎疾患を持った肝臓から発生します。最も大きな原因となっているのは、ウイルス肝炎です。日本では、C型肝炎ウイルスによってもたらされる肝炎及び肝硬変を下地とした肝細胞癌が、70%を占め、B型肝炎ウイルスによる16%を大きく上回っています。全世界でみるとB型肝炎ウイルスを原因とする肝細胞癌が多数を占め、日本は特異な地域と言えます。その他、アルコール性肝炎を基礎疾患とするもの、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を基礎疾患とするものなどがあります。

肝臓癌の検査
 腹部超音波検査:一般の医療機関で、肝臓病診断に最も威力を発揮するのが腹部超音波検査です。腹部超音波検査では、プローブと呼ばれる超音波の発信器を腹部の皮膚に当て、反射して帰ってきた超音波をプローブでとらえて画像を描出する機械です。プローブの皮膚の間に隙間ができると超音波が伝わりませんので、ゼリーを皮膚に塗りその上にプローブをおき、空気が間に入り込まないようにします。腹部超音波検査法は、数十年の間に大きな進歩を遂げ、基本映像法からハーモニック映像法が主流な方法に変化してきました。また、血流を表示するカラードプラ法も今日では、当たり前に使われるようになりました。さらに、超音波造影剤を使った診断法が進歩してきました。以前よりレボビストという造影剤が使われてきましたが、最近ソナゾイドというさらに進歩した造影剤が使用できるようになりました。超音波造影剤は、微小な気泡です。ソナゾイドの場合、気泡の中に含まれる気体は、フッ化炭素(C4F10)です。ソナゾイドを使用すると、大血管から毛細血管まで画像表示させることが可能になります。また、これらの超音波造影剤は、マクロファージやクッパー細胞に貪食されます。このことを利用して、クッパー細胞を含む肝腫瘍と、含まない肝腫瘍を区別することができ、これはすなわち良性の腫瘍と肝臓癌との区別にもつながります。
 MRI検査:MRI検査の造影剤も、進歩がみられます。これまでガドリミウムという造影剤をし、ダイナミックMRIという方法で、肝動脈血流のみで貫流される肝細胞癌を描出してきましたが、EOBプリモビストという新しい造影剤が使えるようになり更に進歩しました。この造影剤は、正常肝細胞にとりこまれるので、とりこまれない肝細胞癌とコントラストをつけることができます。実際には、ガドリニウムと同様の方法でダイナミックMRIを行ったあと、肝細胞相の検査を加えるという形で検査します。その他、SPIOというクッパー細胞に取り込まれる造影剤を使って、肝細胞癌を描出する方法があります。(肝細胞癌の中には、クッパー細胞がないことを利用します。)
CT検査:MRI同様、ダイナミックCTという方法で急速に造影し、早期の動脈相で、肝細胞癌が強く造影されること、逆に平衡相になると肝細胞癌より正常肝細胞領域が強く造影されることを利用して、肝臓癌を見つけます。

肝臓の良性腫瘍
肝臓には良性の腫瘍の方がより多い頻度で存在し、健康診断等でしばしば偶然に見つかります。良性腫瘍の中で最も多いのが、血管腫です。血管腫は、無害であり、原則としてそのまま放置します。
血管腫の画像所見:腹部超音波検査では、様々な輝度(白さ)で存在します。その輝度が、見ている間にいろいろと変化をすることが特徴で、カメレオンサインとも言われます。急速に造影剤を投与して、経過を追って染まり方を見る、ダイナミックCT検査では、周囲から徐々に造影されていくことが特徴です。MRI検査では、T2強調画像で、白く映るのが特徴です。


京都市中京区 内科皮膚科 西村医院