骨粗鬆症

 人体は、柔らかい組織でできていますが、例外的に骨は硬い組織でできています。骨は一見無機物のように見えますが、生きた細胞によって,絶えず生成と分解(リモデリング)を受けています。骨は,コラーゲンという蛋白質の線維と,ハイドロキシアパタイトと呼ばれるカルシウムとリンを中心とした無機質からできています。建築物にたとえると,コラーゲンは鉄筋,ヒドロキシアパタイトはコンクリートのような関係です。この骨の中には、破骨細胞と骨芽細胞があります。破骨細胞は古くなった骨を溶かし、そのあとに骨芽細胞は新しい骨を作っていきます。骨は構造から、皮質骨と海面骨に分けられます。皮質骨は骨の外側を覆っている均質で緻密な骨で、骨の強さに大きく関与します。それに対し、海面骨は骨の内側にあるスポンジ状の構造をした骨です。このスポンジの穴には骨髄が詰まっており、赤血球・白血球・血小板といった血球を作っています。海綿骨は、表面積が大きいことから、多くの破骨細胞と骨芽細胞に囲まれており、その結果骨の増減に敏感に反応します。
 人の骨は生まれた後に年齢とともに増加し、20歳ぐらいで最大骨量となり、その後は中年までほぼ同じ骨量を保ちます。男性の場合はその後ゆっくりと低下してゆきますが、女性の場合は閉経を境に急速に骨量は減少します。これは,閉経により女性ホルモン(エストロゲン)がほとんどなくなるためです。
 骨の量(骨密度)を測る方法は、いくつかありますが、最も信頼でき、標準的と考えられている方法は、DXA法です。これは、微量の2種類のX線を体に当て、その吸収の度合いから、骨の量を計算する方法です。測定部位として、脊椎、大腿骨頸部、前腕の3種類があります。脊椎(腰椎)が最もよいと言われていますが、骨の一部が硬化していたり、大動脈が石灰化していると、誤った値を表示することがあります。また、測定機器が大型で高価であることが欠点です。大腿骨頸部は、骨折を起こすと寝たきりになる可能性が高く、骨折の予防が大切な所です。その意味で、測定場所として重要ですが、測定方法に気をつけなければいけません。前腕は、計測機器が小型で安価であることから最も計測しやすい測定部位です。しかし、全身の骨の代表値として使用することに適当かははっきりしません。
 骨の量(骨密度)が若い頃の最大骨量の70%以下に低下した状態を骨粗鬆症と言います。骨粗鬆症になると、骨折しやすくなります。

 骨粗鬆症を予防するには、カルシウムを多く含んだ食事をとることが大切です。
小魚、牛乳、豆腐には、カルシウムが多く含まれています。また、カルシウムの吸収を促進するビタミンDを服用したり、骨を作るのを助けるビタミンKを服用することも大切です。骨粗鬆症の進んだ人に対しては、骨の減少するのを押さえる、ビスフォスフォネートと呼ばれる薬を服用したり、カルシトニンというホルモン剤を注射をすることが有効です。  女性ホルモンであるエストロゲンは、骨粗鬆症に有効ですが、心血管系の副作用の可能性、発がんの可能性等より、敬遠する方も多いようです。エストロゲンのよいところ(骨粗鬆症の改善)のみとり悪いところ(発がん)を取り除いたSERMと呼ばれる一群の薬剤があり、日本ではラロキシフェンが使用できます。椎体骨折を防ぐのに有用です。
 骨粗鬆症は治りにくい病気ですので、予防が第一です。骨は思春期に多く作られますので、この時期にダイエット等で食生活を悪くすると、中年以降に骨粗鬆症になります。
高齢者や、更年期を迎えた女性は、時々骨の量をチェックしてみましょう。



京都市中京区 内科皮膚科 西村医院
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