睡眠時無呼吸症候群(SAS)

睡眠時無呼吸症候群とは
  睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が何度も中断されたり浅くなったりする病気です。多くの方がいびきを伴います。睡眠時無呼吸症候群には、気道が閉塞されておこる閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と中枢神経からの呼吸をする命令が低下して起こる中枢性睡眠時無呼吸(CSA)があります。睡眠時無呼吸症候群は、太った人に多い疾患として認識されていますが、日本人は必ずしも肥満でなくても同疾患をおこすことが知られており、頭蓋骨格が前後に短く上下に長いことが原因と指摘されています。睡眠時無呼吸症候群は、心血管系の疾患と密接な関係があり、閉塞性睡眠時無呼吸は、高血圧症や心不全をまねき、これらの疾患は中枢性睡眠時無呼吸をもたらすという連鎖を引き起こします。また、不十分な睡眠は、昼間の眠気をもたらし、仕事の能率の低下や、様々な事故の元となります。個人の健康やQOLだけでなく社会の安全の意味でも重要な疾患と認識されるようになりました。

睡眠時無呼吸症候群の診断
睡眠時無呼吸症候群は、同室で睡眠をとる人がいると、比較的簡単に見つけることができます。夜中に何回も呼吸が止まり、その都度大きなイビキとともに呼吸を再開するという状態を教えてくれるからです。そのような訴えをもった患者さんが来られた場合、医療の現場では、特殊な検査をして病状を判断します。もっとも正確な検査は、睡眠ポリグラフ(PSG)による検査です。これは、脳波、眼球運動、オトガイ筋筋電図、鼻および口の呼吸、動脈血酸素飽和度、胸腹部呼吸運動、心電図、いびき、体位、前頸骨筋表面筋電図を同時に測定し記録するものです。実施するには特殊な検査室が必要ですし、一晩の入院となります。しかし、このPSGは正確ではありますが、患者さんにとって時間やコストの負担が大きいため、実際の診療現場では通常、簡易睡眠モニターという呼吸状態と酸素飽和度のみ測定する簡便な方法を使って診断します。呼吸状態は鼻につけたチューブで気流を測定することにより、酸素飽和度はパルスオキシメータという指にはめた測定器にて測ります。その他、寝ているときの体位も記録されます。測定機器は小型ですので、家に持って帰って一晩測定機器を付けて検査を行います。完全に呼吸が止まる無呼吸も呼吸が浅くなる低呼吸も、10秒以上続いた場合1回とカウントし、1時間あたりの無呼吸数と低呼吸数との和である無呼吸低呼吸指数(AHI)を測定します。AHIが5以上でかつ日中の眠気等の症状がある時、もしくはAHIが15以上の時に睡眠時無呼吸症候群と診断します。

睡眠時無呼吸症候群の治療
閉塞型の睡眠時無呼吸症候群の治療にはいくつかあります。まず、太っている方は、やせることが必要です。やせると気道の周りの脂肪もとれますので、空気の通りがよくなります。上を向いて眠ると舌根が落ちて、気道が狭くなりますので、横を向いて寝るよう心がけます。眠っている間に上を向いてしまわないように、背中にテニスボールをくくりつけることを勧める方もいます。(ストッキングにボールを入れて、背中に縛り付けます。)アルコールや睡眠薬も閉塞を悪化させやすいので、要注意です。下顎や舌根を前方に移動させ気道を広げる口腔内装置(マウスピース)もあります。顎の骨の形が先天的に変形している人は、外科的な処置で矯正します。このように閉塞型の睡眠時無呼吸症候群には種々の治療がありますが、もっとも普及し、かつ効果の高い治療法は、nasal CPAP(nCPAP)と呼ばれる呼吸法を使う療法です。これは、睡眠時に鼻に専用のマスクを当て、その間持続的に陽圧を加えて空気を押し込む装置を付けることにより呼吸を改善する治療法です。改善率は高く、初めて装着した当日から深い睡眠が可能となり、翌日の爽快感を得ることができると言われています。ただ、マスクの調整や陽圧の程度の調節など必要なことがあり、なれるまでに時間がかかる場合もあります。AHIが40以上の方、もしくはAHIが20以上でかつ昼間の眠気や倦怠感のある方は、健康保険を使って行うことが可能です。nCPAPに必要な機器は業者が自宅に訪問してセットしてくれます。(機器の不具合があるときは、自宅まで業者が出向いて対応します。)
中枢性の睡眠時無呼吸症候群の治療には、心不全等の原疾患の治療が必要となります。


京都市中京区 内科皮膚科 西村医院